写真館に堀川氏登場!

南方への憧れ

 いつ頃から私が南へ憧れだしたのか、全く定かではないんだけれど、南方を知るきっかけとなったものは、いくつか挙げられるような気がする。
まずは小学生の頃の夏休みのテレビの影響がたいへん強いように思う。毎週日曜日の午前十一時頃からやっていた「ターザン」と「兼高かおる世界の旅」がそれだ。元オリンピック水泳選手のジョニー・ワイズミュラーという人がターザン役で、美女のジェーンとチンパンジーのチータを連れて、動物を大量に殺したり、村人たちを困らせる悪人たちをやっつけるお話であったような気がする。ナイフをくわえて、ツタからツタへ飛び移り、ワニと戦うシーンなどは実に格好良かった。

もうひとつは、インド系美女の兼高かおるさんが、世界中を旅行して、酋長にあったりいろんな物を食べたりする番組である。その頃の兼高さんはたいへん若かったんだろうけど、小学生四年生で、ほっぺたの赤かった私にとってはおばあさんに見えた。この頃の純粋な私は、この二つの番組を一度に見たことで、かなり影響されてしまった。夏休みだったこともあり、見終わった後には目を爛々と輝かせて虫かごをぶら下げ、タモを持ってランニングシャツに麦わら帽子姿で自転車にまたがり、行ける限り遠くまで出かけたものである。しかし、これらテレビの中のお話は、私の住んでいた新潟の田舎とは全く縁遠いものであった。その頃の私は世界地図を広げたこともなければ、外人にあったこともなかった。せいぜい私の知っている世界は自転車で飛び回れる東西南北半径二キロくらいが関の山だった。ただひたすらトンボやメダカを追っかけて山や川に出かけていくのが日課であり、私の世界旅行だった。

同じ年の夏休みに私は初めてチーズというものを食べた。裏のアキちゃんが旨そうに食べているのを見て、ひとつ貰った。確か雪印の三角形の奴だった。私が裏庭でこっそりと隠れながら食べていたら、後ろから突然じいちゃんが現れて「こら!そんな石鹸みたいなものを食べるんじゃない‼︎」と叱られてしまった。私が「石鹸じゃないよ!チーズっていうんだよ‼︎」と反論するとじいちゃんは「むっ!」と厳しい顔つきになって、ザクロの木を見つめながら「戦争に負けとうない!こんな子供までが石鹸みたいなものを食べさせられて…。」と悲しげな顔で溜息をついていた。

この夏休みに、私は初めて南への憧れを感じ、初めて戦争という言葉を耳にした。

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