写真館に木村氏・堀川氏が登場です!

ニモの登場

 2005年10月19日、この日のことは今でもはっきり覚えている。
この日はドルフィンスイムを行う為にエッテン島周辺で1時間ほど捜したが、イルカは見つけられず富士川丸近くのにあるウマン島(冬島)方向にボートの向きを変え走り出したその瞬間であった。西に傾き出した太陽の反射を受けながら、サングラス越しにウマン島方向に向かうイルカの大群を見つけたのである。
海面に出て入るイルカの背びれの数は、今までに見た事がない多さだった。その群れはゆっくりと泳いでいた。こちらもゆっくりボートを近づけ海に入ると下にいたイルカたちは一斉に私の方を見ていた。
イルカたちは全く逃げる様子がなかった。数えてみたらなんと36頭もいた。いままでで最も多い数である。
イルカたちは嫌がることなく私を受け入れてくれ、私の速さに合せて泳いでくれた。群れの先頭にはリーダーのアルパがいて、ほぼ中央にメスのビーやチャーリーがいた。その真ん中に数頭の子イルカたちがいる。
子イルカたちの中にとりわけ小さなイルカが一頭いた。その子イルカはピッタリと母親のビーに寄り添っていた。たいへん可愛らしい顔をしていて私の方をじっとみていた。すると母親のビーがいきなり私に近づいてきて遊びだした。その影響でその子イルカも母親と一緒に私と遊びだし、私の周りをくるくる回りだす。表情が実に豊かで、いきなり上に行ったかと思うと突然宙返りして見たり、また私のすぐ目の前まで来て尾びれを振ってみたリしてくれた。まるで自分がうまく泳げるようになったのを自慢しているような動きだった。しばらくして私はこの子イルカが他のイルカの子供とは違う事に気づいた。どうも泳ぎ方が少し変わっているのである。まだ生まれたばかりで泳ぎがぎこちないのかと思っていたが実はそうではなかった。左の胸びれが異常に小さいのだ。つまりバランスがとりにくい状況での泳ぎなのである。「この子イルカは無事に生きて行けるのだろうか」と私は一抹の不安を覚えた。その夜一緒に泳いだゲストたちとあの子イルカの話題になった。
当時流行っていたディズニーアニメの主人公も左の胸ビレが小さかったことから一人のゲストが「ニモ」と名づけた。そして「ニモ」が無事に生きていけるか心配していた。
みんなの心配をよそにニモは頻繁に姿を現しどのイルカよりも人懐っこく遊ぶようになった。その後アルパもビーも寿命が尽きたらしく姿が見えなくなったがニモはたくましく育っている。

今ではジープ島のドルフィンスイムのアイドル的な存在になっている。

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