写真館に木村氏・堀川氏が登場です!

イルカの不思議

 1998年にイルカのアルパと出会い、それ以降ドルフィンスイムを頻繁に行って来たわけであるが、イルカの行動を見ていてたいへん不思議に思う事がある。洋上でよく目にするハシナガイルカは、通常100から150頭くらいの群れでトラック環礁の南からサラットパスの東にかけての環礁内と外洋を水路から出入りしている。つまり人と関わりのない大海で生活している。
ところが、ミナミバンドウイルカだけは生息域が違っていて、どういうわけか人が住んでいるすぐ近くに生息しているのである。
我々が通常ドルフィンスイムを行うのはエッテン島の周辺、朝方はデュブロン島(夏島)の前で、天気がよく凪いでいる時などは神国丸から日豊丸辺りからフェノム島、更にウマン島(冬島)辺りからジープ島などでも見かける事がある。
ある日、凪の日に富士川丸にアンカーを打ってのんびりイルカを捜していると数頭のイルカの背びれが見え隠れして、エッテン島のほぼ正面に向かっているのを見つけた。するとエッテン島のジャングルの中から小さな子供たちが飛び出して来てイルカを見ながらジャンプしたり手を叩いたりしたのだ。イルカたちはその場で立ち止まり、歓声をあげている子供たちに対して、尾びれだけを水面に出して振ってみたり、ジャンプをしたりしておどけた様子を見せていた。
またある時、ホテルでドイツ人の宣教師と知り合いになったことがあり、その奥さんと3歳の女の子がイルカを見たいというので、ボートを出してエッテン島の前まで連れていったことがある。
海が凪いでいたのですぐにイルカを見つける事ができ、3歳の女の子はたいへん喜んで興奮していた。みんな泳ぎが不得意だというので、夫婦にはライフジャケットをつけさせ、私はその女の子を抱きかかえて水中に入った。
イルカは私の真下まで来てこちらの様子を伺いながら、泳ぎ回っていた。すると女の子はイルカに手を振りだして何か叫び出したかと思ったら、いきなり私を振りほどいてイルカに向かって泳ぎ出したのである。イルカも女の子と楽しそうに遊んでいる。泳げないはずの自分の子供がイルカと泳いでいるわけだから、それを見た両親はびっくりしていた。
この2つの例を見ても、イルカは何らかの形でイルカ以外である人間とコミュニケーションを取りたがる動物なのではないかと思えて来る。
イルカのもう一つの特徴として、イルカのソナー能力(探知能力)はどんなものよりも遥かに優れていると聞いたことがある。これは何処に何かあるというようなことを外的に探知する能力を考えがちだ。それはもちろん備わっているのだろうが、私は更にもっと深い意味、つまり人間の内面的な感情とか情緒というものを感知できる能力を持っているのではと思うのである。

今まで18年以上のイルカとの関わりの中で、こんなことがあった。たまたま私が招待した児童施設の子供たちがいた時に、10頭の以上のイルカがジープ島のハウスリーフに朝の8時から夕方の5時までいたことがあった。あまりないことである。家庭の事情でふさぎ込みがちな子供たちは、そのときばかりは大きな歓声をあげて、その日は5回もハウスリーフでドルフィンスイムを楽しみ大喜びだった。私は傷ついた子供の心がイルカを呼んだのではないかと思っている。

またあるとき10人くらいのメンバーでドルフィンスイムに出かけた時である。10頭以上の群れがすぐに出てくれて、みんなで一斉に海に入った。
この10人のゲストの中に耳の不自由な人が一人いた。私はその人が気になり、うまくイルカと泳げるといいんだがと思って見ていたら、入った瞬間すべてのイルカはその人の所に行ってしまったのである。
このときのドルフィンスイムは1時間以上行ったが、最後の最後までイルカはその耳の不自由な人から離れなかった。そしてボートに上がってきた時、その人は満面に笑みを讃えていた。

少し自閉症気味の人がきた時も同じことが起こり、また奥さんを亡くしたとかご主人を亡くしたばかりの人たちの場合でも同じ様な事が起こり、そんな時にはイルカがジープ島までやって来て思いっきり何度も何度もジャンプしている事もあった。

こんな例もある。若い夫婦が「話があるので少し時間をもらえますか?」ということで、他のゲストはドルフィンスイムに出かけ、そのカップルと私だけが島に残ったことがあった。私は島の西側にテーブルと椅子を用意してお茶をのみながら海の方を向いて話を聞いていた。
奥さんは仕事で嫌な事があり、いつまでもそのことがまとわりついて吹っ切れない様子でたいへん悲しそうな顔をしていた。私は「素敵なご主人も見つかりこうやって2人でジープ島に来られたんですから、今日限りでそのことは断ち切ってしまったらどうですか?」と話しかけた。すると「はい!」という返事が返ってきたので「何か楽しい事を考えましょう!今から何かやりたいことはありますか?」と尋ねたら・・・・・・「イルカと泳ぎたいです!」と力強く返事が返ってきた。
私は、一瞬「エッ、さっきイルカのボート出ちゃったんですけど・・・・・・」と言いかけた瞬間である。海側を見ていた私の目に数頭のイルカの群れがハウスリーフに来ているではないか。私はにんまりと笑って「じゃあ後ろをみてください!」と言い、びっくりして立ち上がった2人はあわててマスクとフィンを付けて海に飛び込んだ。海に入って泳ぎ出すとイルカは何かを祝福するように2人のまわりをくるくると泳ぎ回っていた。

このような事がかなりの頻度で起こっている事実を考えてみると、やはりイルカには人間の感情を読む能力があり、そのことに関しては人間以上に早く瞬時にして感知し、同時に癒す力があるような気がしてならない。

人は、誰でも心に傷があるから、イルカに会いに出かけるのかもしれない。

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