写真館に木村氏・堀川氏が登場です!

風倒木(自然に無駄なものはない)

 島から船で出て外洋との境の環礁の島々に上陸すると、大きな風倒木が倒れっぱなしになっていることがある。おそらく5、60年近く生きて風で倒れ、朽ち果てようとしている椰子の大木である。島のビーチを歩いていると海に張り出して倒れているものだから歩くのに邪魔で一瞬ゴミのように思われるのであるが、実はそうではない。マスクをつけてこの風倒木の下をよくよく覗き込んでみると、様々な生物たちが息づいていることが分かる。
 木が倒れっぱなしになっていると、そこに苔が生える。微生物が繁殖する。そしてその微生物を食べにメダカほどの小魚たちがやって来る。その小魚を食べにアジなどの魚たちがやって来る。またその魚を食べるためにアジサシなどの鳥たちがやって来る。そしてそこで始まる食物連鎖によって風倒木が朽ち果て、海に養分を与える。そのことが海を豊かにする。やがて島に多くの鳥たちが住むようになりジャングルも豊かになる。すべてが繋がりあっている。これは自然に無駄なものがないという証拠なわけである。人間も自然に養われているということを知った時、はじめて本当の人間らしさを取り戻すのではないか?と思えてくる。

 人間にとって一見無駄なように見えるけれども、実はたいへん貴重なものというのがあるんじゃないか?自然の中でただぼんやり自分を見つめる時間は決して無駄ではないような気がする。

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