写真館に木村氏・堀川氏が登場です!

ダイビング紀行

 人間は子供から大人そして老人に至るまで、みな、常に刺激を求め探究心が旺盛である。それは人間の三大欲と言われる食欲、睡眠欲、性欲であったり、また自然の中にいろいろな未知なるものを見に出かけていくというのも、その一つといえる。例えば登山家になぜ山に登るのかと尋ねれば「そこに山があるからだ!」と答えるし、またダイバーになぜ海に潜るのかと尋ねれば、「そこに海があるからだ!」と答えるのである。人間はいつも感動や驚きを求めてやまないのである。

私がダイビングをするのも、一つには未知なるものへの挑戦であり、それに出会うためである。大きな驚きを得たいが故に、重いタンクを背負い色んなところへ出かけていくのである。またある意味では陸の世界からの逃避とも言える。
ダイビング機材を担いで旅に出る。ギリシャへ行く、ガラパゴスへ行く、モルジブへ行く、エジプトへ行く、カリブ海へ行く。いろいろ出かけてみたが、日本を出発して現地に到着してホテルにチェックインし、「ああ、俺は今旅をしているんだ!異国の地に来たんだ!」と思いながらも、着いたばかりの時はまだ体の奥底にぼんやりと日本のことを引きずっている。
初日の夜などはベッドに入ってもなんとなく落ち着かず、日本のことを考えてしまったり、仕事のことを思い出したり、いろいろなことが明滅し始める。ところが二日目になって、機材を担いでボートに乗り込み真っ青な海を見ながらダイビングに出かけて行って、タンクを担いでバックロールで水中にエントリーした瞬間、目の前に美しい別世界が広がり、日本も仕事も諸々全てのものがいっぺんに蒸発してしまう。もう水中に夢中になってしまっている。マスク越しに魚を見る、サンゴを見る、青に浸る、いつしか目が爛々と輝いてくる。
水中はまさに生物の宝庫である。一回のダイビングで何千という生物たちと出会う。捕食のシーンだったり、産卵のシーンだったり、交尾のシーンだったり、いろいろである。
時には何頭かの野生のイルカが現れて一緒に遊んでくれることもある。ひしひしと喜び、嬉しさ、感動がこみ上げてくる。そこには人を惹きつけて離さない魅力的な世界がふんだんにある。

そして陸に上がって真水を浴びて、バスタオルにくるまってコーヒーでもすすりながら、さっきまで潜っていた真っ青な海を眺めていると、まったりとした幸せな時の流れを感じるのである。

タイトルとURLをコピーしました