2004年、キミシマでさらに新たなポイントが見つかった。そのポイント名は「ジュエリードロップ(宝石の壁)」という。
顔が青で体が白いアオマスクや、紫とオレンジ色のスミレナガハナダイや黄色とピンクのバートレットフェアリーバスレット、真っ青なハナゴイや真っ赤なフレームエンジェルフィッシュなどがいたるところに群れていて、さらに水深を下げていくと青と白と黄色の大変かわいいマルチカラーエンジェルフィッシュも見ることができる。また通常三十メートルくらいの深さにいると言われている紫がかったアケボノハゼや青と黄色の入り混じったヘルフリッジなどが、水深十二メートルの地点から生息していたりする。
壁に真っ白な砂を敷き詰めて、そこに様々な形と色彩の小魚たちを散りばめたその美しさは、まさに「宝石の壁」である。
・・・前に、日本からやって来たある男性に、「こことサンドパラダイス、どっちが綺麗なんですか?」と聞かれたので、「これはどちらも甲乙付け難いんですね。私自身も迷っている次第なんです。」と答えると、「それじゃあ、よくわからない。もっと具体的に。」と返されたので、「いわゆるキャビアでいえばベルーガ、シャンペンでいえばドンペリ、野球界でいえばやっぱり長嶋茂雄でしょうね。」と、私にはとってもわかりやすいと思われる例えで答えたのに、「余計にわからなくなった!」と言われてしまった。そこで、「いいですか、ある日いい女と出会って一夜を過ごしたとします。ことが終わった後に眠くなりますね?その時、寝ようと思っていたんだけれども矢も楯もたまらず、またいたしたくなる女。これがいい女なんです!ではダイビングポイントではどうでしょう?一度潜って大変満足しますね。ところがボートに上がってタバコか何かをふかしながら、ぼんやりとしているうちに思わずもう一度潜りたくなるポイント、これがいいポイントなんです‼︎ですからいい女、いいポイントというのは、楽しさの中にどこか離れたくない、いつまでも一緒にいたい‼︎というような、いわゆる切なさ或いは哀切というようなものが湧いてくるものなんです。つまり、どちらのポイントも離れられないということです。わかりました⁇」と、精一杯説明したのだが、彼は、おもむろに腕を組んで空を見上げながら、「ナールほど!じゃあダイビングも女も結構辛いものなんですね!」とあまり私の意図を理解してくれなかった。私なりに、よりわかりやすい例えで話したつもりなんだが…。
その後、結局彼は完全にそこのポイントにハマってしまい、滞在中「またやりたい!じゃない、また行きたい‼︎」を連発していた。