写真館に堀川氏登場!

海中散歩

 ジープ島というのは歩いて275歩とたいへん小さな島なんだけれども、島の周りのリーフはかなり広い。タンクを担いで潜ってもとても1本で回り切れるものではない。島から20m以上の幅で360度サンゴが張り出し、そこには数えきれないくらいの海中生物が生息している。潜るたびに様々な発見があり、その自然の豊饒さには驚かされる。きれいなサンゴのお花畑をタンクを背負って散歩しているようなものである。

 ここの海中における魚の多さ、サンゴの多さ、また、それらの色彩の豊かさやコントラストなどは目を見張るものがある。まさに大自然の生んだ偉大なる芸術といえる。この協妙な色のバランスというのは見事の一言に尽き、「大英博物館」でも「ルーブル美術館」でも、とてもかなわないように思える。
 私はこの海中散歩が好きで、暇な時はかかさず行なう事にしている。まぁ、スコットランド辺りの貴族が、広い庭園を杖を持って優雅に朝の散歩をするようなものである。私の場合、杖ではなくタンクだけど...。しかも私は、貴族でもなければ王様でもない。小さな無人島に住む、ひとりの都会に疲れた中年男にしか過ぎない。40歳を過ぎて、いまだ家もなく島暮らしをしているわけである。いわばホームレスのようなものである。椰子葺きの屋根の下で寝ていて、ダンボールの中に寝ていない分だけ、また周りが海で食べる事に困らない分だけリッチなホームレスといえる。いわば『KING OF HOMELESS」ということになる。着るものはTシャツ2枚、短パン2枚、あとは150円のサンダルが2足!それだけあったら十分暮していける。この大自然の中では...。

 遠い昔ファーブルが、南フランスのプロバンスにて『フンころがし』に夢中になったように、私は今、トラック諸島のジープ島にて『ヘコアユ(奇妙な魚)』に夢中になってる。この『ヘコアユ』の幼魚などをじっと見ていると、いつしか心が少年になり、目が科学者になっているのがわかる。世の中仕事に夢中になる人、海や山に夢中になる人、また女や男に夢中になる人、様々だけど、いい年をしたおっさんになって夢中になれるものがあるというのは、ある意味たいへん幸せなことなのかもしれない!

 「中年よ、大志を抱け!!」と自分に言い聞かせている今日この頃です。

 ※2006年十一月のエッセイから

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